「よっしゃ!来月のハワイ支店の視察出張、木曜日と金曜日で終わるな。部長、そのまま土日は有給休暇をつなげて、自費でおいしいパンケーキ食べてから月曜日に帰国してもいいですか?」 「お前……会社の経費で行く厳しい出張のついでに、ちゃっかりハワイ観光(レジャー)を楽しもうってのか!?」 「えっ、ダメなんですか?交通費は会社が出すし、土日のホテル代は自分で払うから、会社にとっても損はないと思うんですけど……」
ひと昔前なら「ふざけるな!」と怒鳴られていたこんな提案も、今の時代は「ブリージャー制度」という立派な名前がついて、大企業を中心にどんどん許可されるようになってきています。
今回は、「ワーケーション」の親戚であり、出張族のビジネスマンがこっそり夢見る新しい働き方のキーワードをわかりやすく解説します。
ブリージャーとは? 一言でいうと
一言でいうと、ブリージャー(Bleisure)とは、「Business(仕事・出張)」と「Leisure(余暇・観光)」をくっつけた造語で、遠方への出張を利用して、その土地でプライベートな観光もついでに楽しんでしまおうという働き方のことです。
これを、「出張用のスーツケースの中身」に例えてみましょう。
昔の出張のスーツケースには、「パリッとしたビジネススーツと革靴」しか入れてはいけませんでした。「金曜日に商談が終わったら、とんぼ返りですぐに新幹線(飛行機)に乗って帰ってこい!」というのが絶対のルールだったからです。
しかし「ブリージャー」が許可された会社では、スーツケースの片隅に「遊び用の海パンやアロハシャツ(レジャー用品)」を隠し持っていくことができます。 水曜〜金曜まではビジネススーツを着てバチバチに仕事をします。ここまでは会社の経費です。そして金曜の夕方からアロハシャツに着替え、土日は完全に自腹で海で遊んでから月曜日に帰ってきます(行きと帰りの交通費だけ会社が出してくれます)。 会社側としては「交通費は同じだし、社員が長距離移動のあとにリフレッシュできてモチベーションが上がるならアリだな」という、会社も個人も両方ハッピーになる仕組みなのです。
ビジネスの現場での使い方
実際の人事の現場で「ブリージャー」がどう使われているのか、よくある3つの場面を見てみましょう。
「優秀なグローバル人材を採用するため、福利厚生にブリージャー制度を導入しよう」
- 裏にある意味・意図:
- 「海外出張が多い激務のポジションは、ただでさえ時差ボケや疲労で社員が辞めやすい。だから『出張のついでに自腹でそのまま週末ヨーロッパ観光していいよ(交通費は会社持ち)』というご褒美のルール(ブリージャー)を明文化すれば、『それなら入社したい!出張したい!』という若者が増えるはずだ」
- 過酷な出張を「魅力的なインセンティブ(ご褒美)」に変換する採用戦略。
「ブリージャーを許可するのはいいが、労災の線引きをルール化しておく必要がある」
- 裏にある意味・意図:
- 「金曜日の出張先での商談中にケガをしたら『労災(仕事中の事故)』だけど、土曜日のプライベートの観光中にサーフィンで骨折したら、それはどっちの責任になるんだ?帰りの飛行機代の扱いはどうする?制度をスタートする前に、万が一の事故の責任の所在をハッキリさせておけ」
- 柔軟な働き方の裏にある、総務・労務担当者のリアルな実務調整。
「ワーケーションとブリージャーの申請フォームは別にしておいてください」
- 裏にある意味・意図:
- 「『休みのついでに少し働く』のか、『仕事の出張のついでに少し休む』のかで、交通費の経費精算のルールが全然違う。だから、同じ『旅行先での仕事』でも、入り口がどっちなのかを明確に分けて管理してくれ」
- 経理処理をスムーズにするための、制度の厳密な切り分け。
「ワーケーション」との違い
「それって、要するにワーケーションのことだよね?」とよく勘違いされますが、実は「主役と脇役(どっちがついでか)」が全く逆です。
| 比較ポイント | ブリージャー(Bleisure) | ワーケーション(Workation) |
|---|---|---|
| どっちが主役? | 「仕事(出張)」がメイン。観光はついで。 | 「休暇(旅行)」がメイン。仕事はついで。 |
| 滞在先の決め方 | 会社の命令で決まる(訪問先の顧客の場所など)。 | 自分の好きなリゾート地や温泉などを自由に選ぶ。 |
| 交通費の負担 | 仕事の移動なので、基本的に会社が出してくれる(経費)。 | プライベートの旅行なので、基本的は自腹(自己負担)。 |
| 現場でのざっくりした違い | 「出張のついでに、帰りたくないから自腹でもう一泊する」 | 「温泉旅行に行きたいけど、どうしても午前中だけウェブ会議に出なきゃいけないからノートPCを持っていく」 |
見分け方としては、「『社長、出張のついでに1日遊んで帰っていいですか?』がブリージャー。『社長、明日からハワイに行きますが、海辺で仕事するんで有給は使いません』がワーケーション」と覚えましょう。
まとめ
- ブリージャーとは、「ビジネス(出張)」と「レジャー(観光)」を組み合わせた言葉で、出張の前後に私的な休暇をくっつけてその土地を楽しむ働き方のこと。
- 交通費は会社が出し、観光中にかかる宿泊費や食費などを自分で払うことで、社員は超お得に旅行ができ、会社は社員の満足度を上げられるWin-Winの制度である。
- 「旅行のついでに少しPCを開く」ワーケーションとは逆で、「会社の命令で行った出張のついでに、スーツケースに隠し持ってきた私服でちょっと遊ぶ」のがブリージャーである。
今日できるミニアクション: あなたの会社の就業規則(または総務のポータルサイト)を開いて、「出張規程」や「休暇のルール」を検索してみてください。実は最近、こっそりと「出張時の前泊・後泊のルール」が緩和され、ブリージャーに近いことがすでに許可されている会社が増えています。もし制度があるなら、次の出張の機会に「金曜出張・土曜観光」のスケジュールを上司に提案し、合法的に出張先のご当地グルメを堪能してきましょう。