「よし、今日はハンバーガーだけ(300円)食べて安く済ませよう」 「お客様、ハンバーガー単品にプラス200円するだけで、『ポテトMとドリンク(定価400円相当)』がついてくる【超お得なバリューセット(500円)】にできますが、いかがですか?」 「えっ!200円ポッキリで400円分も追加されるの!?じゃあセットでお願いします!」

これは、私たち消費者が日常的にもっともよく引っかかっている(そして喜んでお金を払っている)企業の罠です。

複数の商品を別々に売るのではなく、「まとめてセットにするから安くするよ」と言って、客単価を上げる強力な販売テクニック「バンドル戦略」の仕組みについて解説します。

バンドルとは? 一言でいうと

一言でいうと、バンドル(Bundle:英語で「束ねる、包み」の意味)は「商品Aと商品Bを組み合わせてパッケージ化し、単体ごとの合計金額よりも低い価格を提示することで、顧客にお得感を与えて『ついで買い』を誘発し、企業の総売上や顧客単価を引き上げる手法」のことです。

これを、「ファストフード店の魔法のメニュー」に例えてみましょう。

お店の本当の狙いは、「原価が極端に安くて利益率が高い『ポテトとコーラ』」をたくさん売って儲けることです。 でも、お客さんは「ハンバーガー」しか目当てにしていません。

そこで、店長は「バンドル(ハンバーガー+ポテト+コーラのセット)」を作ります。 「単品でバラバラに買うと700円ですが、今なら全てセットで500円です!」と宣伝します。 するとお客さんの脳はバグ(錯覚)を起こし、「別々に買うより200円も得してる!単品で買うのは絶対に損だ!」と思い込み、本当は欲しくなかったポテトとコーラまで喜んで買ってしまうのです。企業から見れば、まんまと「客単価を300円から500円に引き上げる」ことに成功したことになります。

ビジネスの現場での使い方

実際の現場で「バンドル」がどう使われているのか、よくある3つの場面を見てみましょう。

「売れ残りの在庫は、人気商品にバンドルして在庫処分をしろ」

  • 裏にある意味・意図
    • 「全然売れない不人気のゲームソフト(在庫の山)を、そのまま棚に置いていても一生売れない。だから、大人気の新作ゲーム機本体に『今ならソフト3本付き(バンドル版)!』という名目で抱き合わせにして売ってしまえ。お客さんは『おまけがついてお得だ』と錯覚し、ウチの在庫の山もタダ同然で吐き出せるから一石二鳥だ」
    • 不人気商品を、人気商品の「おまけ」として消化するという販売テクニック。

「バンドル価格の割引率を高く見せすぎて、単品の価値(ブランド)を下げるなよ」

  • 裏にある意味・意図
    • 「パソコンを買うと、『10万円する高級なデザインソフト』がセット(バンドル)で無料でついてくるキャンペーンをやろう。でも待てよ。これをやりすぎると、お客さんに『なんだ、このソフトってパソコンのおまけで無料配りできるレベルの価値しかないのか』とナメられてしまうぞ。セットでお得に見せるのも大事だが、商品の威厳(ブランド価値)まで落とさないように気をつけろ」
    • 過度な安売り(バンドリング)がもたらす、ブランド棄損の罠への警告。

「通信費とスマホ代のバンドルリング(抱き合わせ)は法律ギリギリだから気をつけろ」

  • 裏にある意味・意図
    • 「昔の携帯ショップは、『ウチの光回線を契約したら、スマホ本体を0円にしてあげるよ!』という強烈なバンドル(セット)販売で荒稼ぎしていた。しかしこれは、お客さんが他の会社に乗り換える自由を奪う(囲い込みが強すぎる)ということで、国から『過度な抱き合わせはダメ!』と怒られてルールが厳しくなったんだ」
    • 法的リスク(独占禁止法や景表法など)スレスレになるほどの、強力すぎる販売手法への共通認識。

「クロスセル」との違い

バンドルに似たような販売手法で、「クロスセル」という言葉があります。意味は似ていますが、商品を「最初からくっつけているか」の違いです。

比較ポイントバンドル(最初からセットの箱)クロスセル(後からおすすめ)
売り方のイメージ「ハンバーガー・ポテト・ドリンクの【Aセット】はいかがですか?(1つの箱になっている)」ハンバーガーを頼んだ客に、「ご一緒にポテトはいかがですか?(追加で勧める)」
価格の設定セット料金として、単品合計より「割引(お得)」されているのが基本。あくまで別の商品の紹介なので、価格は「定価(そのまま追加)」になることが多い。
客の心理最初から固まっているので、「このセットはお得で楽だ!」とパッケージとして買う自分の意思で「しょうがない、追加してやるか」と別のオプションを買う

見分け方としては、「旅行会社が企画した『飛行機とホテルがセットになったお得なパック』がバンドル。飛行機だけ予約した人に『現地のレンタカーも一緒にいかがですか?』と別のものを後出しで勧めるのがクロスセル」と覚えましょう。

まとめ

  • バンドルとは、複数の別々の商品やサービスをひとまとめ(セット)にし、単品で買うよりもお得な価格設定にして販売するマーケティング手法のこと。
  • ファストフードのバリューセットのように、お客さんに「別々に買うのは損だ(セットの方が圧倒的にお得だ)」と錯覚させ、企業側は「客単価(最終的な支払い金額)」を釣り上げることができる魔法の手法。
  • 単純なセット売りだけでなく、「売れ残りの在庫処分」に人気商品を巻き込んだり、「ソフトは無料だが、後から高いサービス料を取る(プリンターとインクなど)」といった、企業の高度な戦略が隠されていることが多い。

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