「いやー、最近Web広告の調子が悪くてさ。昔は『昨日ウチのサイトでハワイ旅行を検索した人』にピンポイントで広告を出せたからめちゃくちゃ儲かったのに、今は全然違う『北海道旅行』の広告が出ちゃったりして、全然お客さんが買ってくれないんだよ!」 「ああ、アップル(iPhone)やグーグルが、プライバシーを守るために『個人の追跡』をブロックするルールを強化した弊害ですね。ついに広告業界も終わりかもしれませんね……」
今まで私たちは、ネットの世界で「透明なGPS(目印)」をこっそり背中に貼られ、企業から「あいつはダイエットに興味があるぞ!」と監視されながら広告を出されていました。
しかし近年、このGPSを「キモいから法律とシステムの力で強制的に剥がそう!」という世界的な大改革が起きています。これが広告の歴史を変える大事件、「クッキーレス(Cookie規制)」です。
クッキーレスとは? 一言でいうと
一言でいうと、クッキーレス(Cookieless)は「ユーザーのWebブラウザ(SafariやChromeなど)の閲覧履歴をまたいで個人の行動を追跡(トラッキング)するために使われていた『サードパーティCookie(第三者が発行するクッキー情報)』が、プライバシー保護強化の流れを受けて、実質的に利用制限または廃止される動き」のことです。
これを、「遊園地の入場口で背中に貼られるシール(GPS)」に例えてみましょう。
【昔のネット広告(無法地帯)】 あなたがネット上の様々なサイト(遊園地)で遊んでいると、知らない広告会社のおじさんがこっそりあなたの背中に「この客は30代で、靴のサイトを3分見てたぞ」という見えないシール(Cookie)を貼り付けていました。 あなたはどのサイトに行っても、そのシール(GPS)を頼りに「靴買いませんか!?」と執拗に追いかけ回されていました(リターゲティング広告)。
【クッキーレス時代(現在の革命)】 世界中で「他人の行動を勝手に監視して追いかけ回すのは、気持ち悪いし人権侵害(プライバシーの侵害)だろ!」と大炎上しました。 そこでiPhoneを作るAppleやGoogleなどの大企業が、「よし、これからはブラウザの機能で、広告会社が勝手に客の背中にシール(Cookie)を貼る行為をブロック(無効化)する!」とルールを変えたのです。 これが「クッキーレス」です。広告会社(おじさん)はシールが貼れなくなり、あなたがどこで何を見ているか全く分からなくなったため、「誰に何の広告を見せればいいんだ……」と迷子になってパニックに陥っているのです。
ビジネスの現場での使い方
実際の現場で「クッキーレス」がどう使われているのか、よくある3つの場面を見てみましょう。
「クッキーレス時代に備えて、自社で直接お客さんのメールアドレス(ファーストパーティデータ)を集めろ!」
- 裏にある意味・意図:
- 「今までは、広告会社(第三者)が勝手に集めてくれたCookie(他人のデータ)に頼って広告を打っていたから楽だった。でも法律でそれが禁止(クッキーレス)になった以上、これからは『ウチの会社独自の会員アプリ』などを作って、お客さん自身から『私の個人情報(アドレスや名前)をダイレクトメールに使っていいですよ』と直接同意をもらう独自のデータ(ファーストパーティデータ)を自分たちの足で集めないと、二度と宣伝ができなくなるぞ」
- 他人力(Cookie)からの脱却と、自社努力(顧客との直接の信頼関係作り)への大転換命令。
「ウチの『一度来た客を追いかける広告(リタゲ広告)』の成績が急落しているのは、クッキーレス(ITP規制)のせいだ」
- 裏にある意味・意図:
- 「昔は1万件売れていた『リターゲティング広告(追いかけ広告)』が、最近は3千件しか売れない!広告担当がサボっているわけじゃない。AppleのSafari(iPhoneの標準ブラウザ)に『ITP』という強力なCookieブロック機能が搭載されたせいで、iPhoneユーザーを裏側で追いかけることが物理的に不可能になっちゃったんだ(広告が届かなくなったんだよ)」
- 広告成果の悪化の裏にある、「プラットフォーマー(AppleやGoogle)の強大な権力とルール変更」という不可避の悲劇。
「Cookieに依存しない、文脈(コンテキスト)に合わせた広告配信に切り替えよう」
- 裏にある意味・意図:
- 「『その人が過去に何を見ていたか(個人を追跡するCookie)』がわからないなら、『その人が今読んでいる記事の内容(文脈)』に合わせて広告を出せばいいじゃないか。例えば『キャンプのやり方』という記事の横には、誰が読んでいようが『テントの広告』を出す。個人のプライバシーを暴かなくても、コンテンツとの相性(コンテキストマッチ)で勝負する健全な広告に戻ろうぜ」
- ストーカーのような広告からの脱却と、原点回帰のマーケティング手法への提案。
「1st Party Cookie」との違い
「クッキーレスっていうんだから、世の中のすべてのCookie(保存データ)が禁止されるんでしょ?毎回ログインのパスワードいれるの面倒なんだけど!」と勘違いする人がいます。違います。すべてのCookieが滅びるわけではありません。
| 比較ポイント | サードパーティCookie(第三者のクッキー)=規制される【悪】 | ファーストパーティCookie(自社発行のクッキー)=規制されない【善】 |
|---|---|---|
| 誰がシールを貼る? | あなたが見ているサイトとは全く関係ない「広告会社」のサーバーが裏で勝手に発行する。 | あなたが「今まさに直接見ているそのサイト」自身(AmazonやTwitterなど)が発行する。 |
| 何に使われる? | 「この人は色々なサイトで靴を探してるな」と、サイトを横断してあなたを監視・追跡し、広告を出すため。 | 「あ、昨日ログインした山田さんだね。パスワード入力しなくていいよ」「カートの中身残しといたよ」とあなたを便利にするため。 |
| クッキーレスの影響 | プライバシー侵害の温床なので、世界的にブロック(廃止)される(クッキーレスの正体)。 | ユーザーの利便性を下げるだけなので、これからも普通に使い続けられる。 |
見分け方としては、「クッキーレスで禁止されるのは、お前誰だよ!という知らないおじさん(広告会社)が勝手につけてくる『追跡のCookie(サードパーティ)』だけ。自分が使っているサイトが優しさで覚えといてくれる『便利帳のCookie(ファーストパーティ)』は今まで通りセーフ」と覚えましょう。
まとめ
- クッキーレスとは、Webサイトを横断してユーザーの行動を監視・追跡してきた「サードパーティCookie(目印のデータ)」が、プライバシー保護の観点から使用制限・廃止される動きのこと。
- 見えないGPSのシール(Cookie)を背中に貼られて、どんなサイトに行っても追いかけ回される「気持ち悪い広告(リターゲティング等)」に対する、AppleやGoogleを中心とした巨大な規制。
- 広告業界は「他人の集めた追跡データ」にただ乗りできなくなるため、これからは自社で直接お客さんと関係を築き、「メルマガ送ってもいいですか?」と個別に許可(同意)をもらっていく正攻法のマーケティングに戻らざるを得なくなっている。
今日できるミニアクション: Webサイトを見ていると、画面の下から突然「当サイトではCookieを使用しています。同意しますか?【すべて許可する】【拒否する】」という邪魔なポップアップが出るようになりましたよね?あれこそが、クッキーレス時代(プライバシー保護規制)の象徴です。「勝手にGPSをつけると法律(GDPRなど)で罰せられるようになったので、ちゃんと言い訳として許可のボタンを押させている」のです。これからは、面倒でも思考停止で「すべて許可」を押さず、「このサイト、変な裏の広告会社に私のデータ(Cookie)を横流ししようとしてるな」と疑いながら、「必須Cookieのみ(拒否)」を選ぶ癖をつけてみてください。自衛の第一歩です。