「ウチのECサイトの売上、今までGoogleやYahooの広告(サードパーティデータ)に頼りっきりだったんだけど……最近『プライバシー保護』のルールが厳しくなって、広告の効果がガタ落ちしてるんだよ。どうしよう!」 「社長、だから前から言ってたじゃないですか。他人のシステムに頼らず、直接お客さんに『メルマガに登録してね』とお願いして、自分たちで顧客リスト(データ)を集めておかないと生き残れないって!」
インターネット上でお客さんの行動を追跡(ストーカー)する広告のやり方が、世界的に禁止されつつあります(クッキーレス時代)。
この大転換期に、世界中の企業が血眼になって集めようとしている「自前の宝物」が「ファーストパーティデータ」です。次世代のマーケティングを生き抜くための最強の武器を解説します。
ファーストパーティデータとは? 一言でいうと
一言でいうと、ファーストパーティデータ(1st Party Data)は「顧客が自社の会員登録や購入の際に提供してくれた名前やメールアドレス、または自社サイト内での閲覧履歴など、企業が『自らの手で直接収集し、保有する』純度100%のデータ」のことです。
これを、「スーパーのチラシと常連ノート」に例えてみましょう。
昔の会社は「新聞の折り込みチラシ(サードパーティ・他人のデータ)」に依存していました。新聞屋さんにお金を払って、誰が見るかわからないチラシを大量にまいて集客していました。しかしある日突然、新聞屋さんが「もうチラシを入れるのは禁止になりました!」と言い出したら、お店は一気にお客さんが来なくなり潰れてしまいます。
そこで賢い店長は、「自分の店の常連ノート(ファーストパーティデータ)」を作りました。 お店に来てくれた人に「もしよかったら、LINEでお店の友達になってくれませんか?割引クーポン送りますよ!」と直接お願いして、名簿を作ります。 これなら、新聞屋さんのルールが変わろうが関係ありません。「自分たちで直接集めた常連さん(濃いファン)」に対して、自分たちの好きなタイミングで「今日は大根が安いよ!」と直接メッセージを送ることができる無敵の宣伝ツールになるのです。
ビジネスの現場での使い方
実際の現場で「ファーストパーティデータ」がどう使われているのか、よくある3つの場面を見てみましょう。
「いかにファーストパーティデータを集めるか、それが今後の全社の最重要課題だ」
- 裏にある意味・意図:
- 「今まではお金を払ってGoogleの広告を出せば新規の客が買ってくれた(他力本願)。しかしこれからは、お客さんと直接繋がる『自社アプリ』や『独自の会員プログラム(ポイント制度)』を作って、お客さん自身に『私の個人情報を使っていいですよ(同意)』と言ってもらわなければならない。自社でデータを囲い込む努力(自力)をした企業だけが勝つ時代だ」
- 広告費を削ってでも、自社の会員基盤(CRM)を作ることに投資しろという経営判断。
「他社から買った怪しい名簿より、自社のファーストパーティデータの方が圧倒的に信用できる」
- 裏にある意味・意図:
- 「どこかの業者から『お金持ちのリスト1万人分』とかを買ってきても(サードパーティデータ)、情報が古かったりウソが混ざっていて全然売れない。だけど、ウチのサイトで『実際に商品を買った1,000人』の購入履歴(ファーストパーティデータ)は、嘘偽りのないウチの会社の純粋なファンだ!人数は少なくても、利益を生み出す質は圧倒的に高いんだよ!」
- データの「量」よりも、自分たちで集めた「質(正確性と鮮度)」の重要性を説く言葉。
「ファーストパーティデータを分析して、VIP顧客を優遇する施策(LTV向上)を打て」
- 裏にある意味・意図:
- 「自社で集めたデータを見れば、『山田さんは毎月必ずウチの新作の服を買ってくれる』ということが一目でわかる。だったら、Googleでお金をバラマいて新規の客を呼ぶよりも、この山田さんのようなVIP顧客だけに『あなただけの特別な先行シークレットセール』のDMを送って、もっとファンになってもらった方が絶対に儲かるぞ」
- 既存の顧客を徹底的に分析・えこひいきし、長くお金を使ってもらう(LTVを高める)ための王道戦略。
「ゼロ」と「セカンド」と「サード」の違い
データには「誰が集めたか」によって、数字の呼び方が変わります。
| データの呼び方 | 誰がどうやって集めたか(データの種類) |
|---|---|
| 0(ゼロ)パーティデータ | 顧客が「アンケートや好みの設定」で、自発的に提供してくれた超・本音のデータ。(例:私は辛いものが好きです、という回答) |
| 1st(ファースト)パーティ | 企業が自社のビジネスの中で直接(購入履歴やサイト閲覧などから)集めた自前のデータ。 |
| 2nd(セカンド)パーティ | 「他の会社」が直接集めたファーストパーティデータを、パートナーとして共有してもらったデータ。 |
| 3rd(サード)パーティ | 第三者のデータ専門会社が、世の中の色々なところからかき集めて無断で売っている、薄くて広いデータ。 |
見分け方としては、「自分のお店のレジや会員登録で集めたものがファースト。他のデータ会社からお金で買ってきた出処のわからない怪しいリストがサード」と覚えましょう。プライバシーの問題で「サード」が使えなくなり、「ファースト(自前)」の価値が爆上がりしているのが現在の状況です。
まとめ
- ファーストパーティデータとは、企業が他社のシステムに依存せず、自社のWebサイトやアプリ、店舗を通じて直接顧客から収集した「自前の顧客データ(氏名、購入履歴など)」のこと。
- 他社にお金を払ってばらまく「新聞のチラシ(サードパーティデータ)」に頼るのをやめ、直接やり取りできる「自分のお店の常連名簿・LINE登録」を作る最強の防衛策である。
- プライバシー保護の観点から他人の追跡データ(Cookie)が使えなくなる時代において、「いかに顧客の同意を得て、自社に直接個人情報を預けてもらえる仕組み(アプリ等)を作れるか」が企業の勝敗を分ける。
今日できるミニアクション: 最近、色々なブランドが「とりあえずウチの公式LINEと友達になってください。その場でお会計10%オフにします!」とか「スマホアプリを入れるだけで初回無料!」と赤字覚悟でバラマキをやっていますよね。実はあれが、企業が必死で「あなたのファーストパーティデータ(直接やり取りできる権利)」をお金で買っている(収集している)瞬間なのです。「ああ、この会社は広告代理店に高い広告費を払うくらいなら、私に10%オフの還元をして直接繋がり(ファーストパーティデータ)を得たいんだな」という企業の裏の思惑を感じ取ってみてください。