「なぁ、なんだか最近スマホが俺の心を読んでいる気がして怖いんだよ。昨日、暇つぶしに『沖縄旅行』のサイトを5分くらい見てただけなんだけど……今日になったら、全然関係ないお天気アプリを開いても、スポーツニュースのサイトを開いても、必ず『沖縄旅行パック!』の広告が出てくるんだ!俺、監視されてるのか!?」

いえ、あなたは監視されている(盗撮されている)わけではありません。あなたのスマホの後ろに、企業が「目印のシール」をペタッと貼っただけです。

この「一度ウチのサイトに遊びに来たお客さんを、インターネットの果てまでストーカーのように追いかけ回して広告を見せ続ける執念の仕組み」を「リターゲティング」と呼びます。今回は、知っておくべき広告の裏側を解説します。

リターゲティングとは? 一言でいうと

一言でいうと、リターゲティング(Retargeting:リタゲ)は「一度自社サイトを訪れたユーザーのブラウザに『Cookie(目印のシール)』を付与し、そのユーザーが別のWebサイトを閲覧している時に自社の広告を表示させて、再び自社サイトに呼び戻す(再ターゲットする)Web広告の手法」のことです。

これを、「ものすごくしつこい本屋の熱血店員」に例えてみましょう。

あなたがフラッと本屋に入り、「ダイエットの本」を立ち読みして、買わずに帰ったとします。 普通の広告なら、ここで終わりです。

しかし「リターゲティング」の仕組みを使っているお店は、帰るあなたの背中にこっそり「ダイエット本に興味あり」という見えないシール(Cookieというデータ)を貼り付けます。 すると、あなたがその後家に帰ってテレビを見ている時でも、カフェでコーヒーを飲んでいる時でも、あの本屋の店員が突然横から顔を出して、「お客さん!あのダイエット本、いまなら10%オフですよ!買いませんか!」と、ずっとあなたの背中のシールを頼りに追いかけて(追跡して)宣伝してくるのです。

これが、あなたがどこへ行っても沖縄旅行の広告が出続ける「恐怖の追跡」の正体です。

ビジネスの現場での使い方

実際の現場で「リターゲティング広告(リタゲ)」がどう使われているのか、よくある3つの場面を見てみましょう。

「予算がないなら、新規獲得広告を止めてリターゲティングに全集中しろ」

  • 裏にある意味・意図
    • 「ウチの商品をまったく知らない赤の他人に『買ってください!』と広告を出すのはお金がかかって効率が悪い。それに比べて、すでにウチのサイトを一度でも見に来た事がある人(リターゲティング対象者)は、もともと商品に興味がある『見込み客』だ。彼らが忘れた頃に広告で追いかければ、新規の客を狙うよりも圧倒的に安いコストで商品を買ってくれる(費用対効果が高い)ぞ」
    • 最も効率よく売上を上げるための、広告予算の王道な配分戦略。

「リターゲティングの追跡期間(リーセンシー)は何日に設定していますか?」

  • 裏にある意味・意図
    • 「サイトに来てから1〜3日以内の人なら『あ、あの旅行パックやっぱり買おっかな』って熱が冷めていないから効果がある。でも、サイトに来てから30日も経っている人にいつまでも広告を追いかけて見せ続けると、『しつこい!キモい!二度と買うか!』と逆効果になるぞ。お客さんを追いかける期間(賞味期限)を適切に設定するんだ」
    • 広告の「出しすぎによるブランドイメージの悪化」を防ぐための専門的な運用調整。

「カートに商品を入れたまま逃げた客(カゴ落ち)専用のリタゲ画像を作れ」

  • 裏にある意味・意図
    • 「リターゲティングの凄いところは、『お客さんがどこで帰ったか』まで細かく追いかけられることだ。トップページで帰った客には普通の広告。でも、『買い物カゴに商品を入れたのに、最後のクレジットカード入力画面で逃げた客』は、あと1ミリ背中を押せば絶対に買う超・激熱な客だ!この人たちだけに『今ならカゴの中身が送料無料!』という特別なおいかけ広告を出して一網打尽にしろ」
    • 顧客の行動履歴に合わせて「追いかける言葉(クリエイティブ)」を最適化する高等テクニック。

「リマーケティング」との違い

現場では「リタゲ」と同じくらい「リマケ」という言葉が飛び交いますが、実は意味は同じです。

比較ポイントリターゲティング(Retargeting)リマーケティング(Remarketing)
役割「一度サイトに来た人を追いかける」という全く同じ仕組み「一度サイトに来た人を追いかける」という全く同じ仕組み
どこが違うの?「ヤフー(Yahoo!広告)」やその他の広告会社が使う商標(呼び方)「グーグル(Google広告)」が使っている商標(呼び方)
現場での使われ方「リタゲの調子どう?」と汎用的に使われることが多い。Google広告の運用画面を見ながら話す時に使われる。

見分け方としては、「マクドナルドの『ポテト』と、ロッテリアの『フレンチフライポテト』くらい、会社による呼び方の違い(商標)だけで、中身は全く同じもの」と覚えましょう。現場ではどちらを使っても「あ、一回逃げた客を追いかける広告のことね」と通じます。

まとめ

  • リターゲティングとは、一度自社のWebサイトを訪れて離脱した(帰ってしまった)ユーザーに対して、他の全く関係ないサイトを見ている時でも自社の広告を表示させて追跡する手法のこと。
  • 見え見えない「Cookie(クッキー)」という目印のシールをユーザーに貼り付け、それを頼りに「昨日見てたあの商品、買わなくていいの?」とネットの果てまでストーカーのように追いかける。
  • まったく知らない他人に広告(新規)を出すよりも、「すでに一度興味を持ってくれた人(見込み客)」の記憶を呼び起こすリターゲティングの方が、圧倒的に高い確率で商品が売れる(コスパが良い)。

今日できるミニアクション: もしあなたが「この広告、しつこくて気持ち悪いな」と思ったら、実はあなたのスマホの設定で、この背中のシール(Cookieや広告ID)を剥がすことができます。iPhoneなら「設定」>「プライバシーとセキュリティ」>「トラッキング」を開き、「Appからのトラッキング要求を許可」をオフにしてみてください。これで、あなたがネットを移動しても「追いかけられる(リターゲティングされる)」ことは劇的に減ります。「広告の仕組み(裏側)」を知ることは、自分自身のプライバシーを守るための現代の必須リテラシーなのです。