「自社のサイトを運営してるんだけど、この『田中さん』って人は、水着のページを5分くらい見てるデータがあるんだ。でも、実際に水着を買ってくれたかどうかがわからないんだよなぁ」 「あ、社長!システム部のパソコンには、『田中さんが実店舗のレジで水着を買ったポイントカードの履歴』が入ってますよ!」 「なんだって!?じゃあWebの履歴と、レジの履歴をガッチャンコして一つの箱に入れれば、『ネットで悩んで、次のお店で買う客』っていうのが丸わかりじゃないか!なんで別々に管理してるんだ!」
会社の中に顧客のデータはたくさんあります。しかし、Web部、営業部、店舗と部署が違うため、「データが島のようにバラバラに分断(サイロ化)」されている企業がほとんどです。
この、会社中の(外部のデータも含んだ)バラバラな顧客データを一つの超巨大な箱にぶち込み、マーケティングに使えるように磨き上げるデータ貯金箱を「DMP」と呼びます。
DMPとは? 一言でいうと
一言でいうと、DMP(Data Management Platform:データマネジメントプラットフォーム)は「インターネット上のサーバーに蓄積される様々な情報(Webサイト内の行動履歴、広告への反応、自社の会員データや外部の統計データなど)を一元管理し、広告配信やマーケティング戦略に活用するためのデータ管理基盤」のことです。
これを、「凄腕の探偵の調査ファイル(ファイリング箱)」に例えてみましょう。
昔の会社は、ポンコツの警察です。 「交番のオジサンは、犯人がネットサーフィンした履歴だけ知っている」「鑑識は、犯人がスーパーで買ったレシートだけ持っている」。情報がバラバラなので、犯人の全体像(本当の姿)が全くつかめません。
そこにDMP(凄腕の探偵システム)が登場します。 探偵は、あちこちの部署に散らばっている「犯人の年齢・性別(自社属性データ)」「犯人が検索した言葉(Web履歴データ)」「他社のクレカ購入履歴(外部データ)」を、一つの巨大なバインダー(DMPの箱)に全部まとめてファイリングします。巨大なビッグデータです。 すると、「なるほど!この人物は、平日夜にネットで服を検索し、休日に車で店舗に行って買う『30代の既婚男性』だ!じゃあ、金曜日の夜にスマホに限定クーポンを配信しよう!」と、顧客を丸裸にして、超・高精度のピンポイント広告(マーケティング)が打てるようになるのです。
ビジネスの現場での使い方
実際の現場で「DMP」がどう使われているのか、よくある3つの場面を見てみましょう。
「プライベートDMPを構築して、メルマガの配信の精度を劇的に上げよう」
- 裏にある意味・意図:
- 「今までは『会員全員に同じメルマガ(セール情報)』を無思考で送っていたから、読まれずにスパム扱いされていた。しかし自社専用のデータ箱である『プライベートDMP』を作ってWebの履歴とレジのデータを繋げれば、『過去に靴を買って、かつ昨日サイトで靴下を見ていた30人にだけ、ピンポイントでおすすめメルマガを送る』という神業ができるぞ」
- 大量発信(マス)から、個を狙い撃ちする(One to Oneマーケティング)への進化。
「自社のデータだけじゃ足りないから、パブリックDMPを使って潜在層を探せ」
- 裏にある意味・意図:
- 「ウチは新しく化粧品を作ったけど、まだ会員がゼロだから分析する自社データ(プライベートDMP)がない。だったら、データ専門の大手企業(Yahoo!など)がネット中から集めて売っている『属性データ(パブリックDMP)』の箱をお金で借りて連携させろ!そうすれば『美容に興味がある20代女性10万人』のリストに向かって一気に広告をドカンと打てるぞ!」
- 自分たちの持っていない「外部の巨大なデータ(第三者データ)」を使って新規を開拓する戦略。
「せっかく高いお金をかけてDMPを作ったのに、データのサイロ化が解消されてないぞ」
- 裏にある意味・意図:
- 「DMPという『データを一つにまとめる凄い箱』システムを数千万で導入したのに、営業部が『俺たちの顧客リストは渡さない!』とデータを囲い込んでいるせいで、箱が空っぽじゃないか!(データのサイロ化=縦割り状態)。システムを入れる前に、まず社内の部署の壁をぶっ壊して『全データを提出させるルール』を作らないと意味がないんだよ」
- 会社の「DX(IT化)あるある」である、システムよりも組織間の壁が真の敵であるという悲劇。
「CDP」との違い(ほぼ同じ!)
現場でDMPの話をしていると、最近「CDPってのを使おうよ」という言葉が出てきて混乱します。実務上は「ほぼ親戚(同じようなもの)」ですが、得意分野が少し違います。
| 比較ポイント | DMP(Data Management Platform) | CDP(Customer Data Platform) |
|---|---|---|
| 得意なこと | 匿名(名前のわからないCookie等)の巨大なデータを集めて、「ざっくりとした広告配信(新規獲得)」を得意とするデータ箱。 | 「山田太郎さん」という実名の会員データ(1stパーティ)を統合し、「個別の接客(リピーター育成)」を得意とするデータ箱。 |
| 例え話 | 「車好きな30代男性の集団」に網を投げて広告を撃つ大砲。 | 「昨日ウチで靴を買ってくれた山田さん」をおもてなしする手厚いコンシェルジュ。 |
| 時代の流れ(最近) | プライバシー規制(クッキーレス)のせいで、他人の匿名データ(DMPの武器)が使いづらくなり、元気がなくなっている。 | 自社で直接集めた実名データ(ファーストパーティ)をフル活用する「CDP」の方が、現在の超・主流(トレンド)になっている。 |
見分け方としては、「どっちも『バラバラのデータを一つにまとめるデカい箱』だけど、匿名の集団に対して広告を撃つのが【DMP】、名前のわかる個人の常連さんをおもてなしするのが【CDP】」と覚えましょう。現場では「顧客データ基盤」と日本語でごまかして使うことも多いです。
まとめ
- DMPとは、企業の中に散らばっている「Webの閲覧履歴」や「レジのポイント履歴」、さらには外部の「属性データ」などを一つの巨大なプラットフォーム(箱)に合体させ、分析するための仕組みのこと。
- ネットの足跡やリアルのレシート、バラバラの証拠を一つのファイルにまとめる「探偵の調査ノート」のようなもので、顧客の行動を丸裸にしてピンポイントの戦略(広告やメルマガ)を打つことができる。
- 近年はプライバシーの問題(クッキーレスなど)により、匿名の外部データに頼るDMPの形から、自社の会員(実名)データを丁寧に管理・活用する「CDP」へとトレンドが移行しつつある。
今日できるミニアクション: あなたが買い物をするとき、「ポイントカードはお持ちですか?」と聞かれるのが面倒だと感じることがあると思います。しかし、企業があれほど必死に(Tポイントや自社アプリの)バーコードを出させたがるのは、「1円分の還元をしてでも、あなたのレジでの『誰が何を買った』というオフラインのデータを、自社サーバーの巨大な箱(CDPやDMP)に吸い上げたいから」なのです。「カードを作れば無料!」という大サービスの裏には、企業側の「データを一つに繋ぎ合わせたい(DMPを分厚くしたい)」という執念が隠されていることを思い出してみてください。