「よし、ウチの会社の新しいダイエットサプリの広告を、色んなまとめサイトやブログにたくさん表示させたいぞ。でも、どこのサイトにいくらで広告を出せばいいのか、いちいち手作業で探して交渉するのは面倒すぎる!」 「社長、ご安心ください。そんな時は『DSP』という全自動システムを使います。これにお金を入れてターゲットを設定すれば、AIが勝手に『うちのサプリにピッタリのお客さん』を見つけ出し、自動で最適な値段で広告を出してくれますよ!」
インターネットの広告は、昔のように「この画面の右上枠、月額10万円で買います!」というアナログな交渉はもうしていません。
今では、あなたがスマホの画面を開いた「0.1秒」の間に、コンピュータ同士が光の速さで「自動オークション」を行って出稿を決めています。この、広告を出したい企業側の自動入札マシーン「DSP」について解説します。
DSPとは? 一言でいうと
一言でいうと、DSP(Demand-Side Platform:デマンドサイド・プラットフォーム)は「広告主(Demand側)が、広告の費用対効果(ROI)を最大化するために利用する、広告枠の自動買い付け・配信・最適化ツール」のことです。
これを、「魚市場(豊洲市場)の、凄腕のマグロの買い付け人」に例えてみましょう。
【昔のアナログな広告出稿】 昔はお店の人が、「Aという海に手漕ぎボートで行って、自分で魚(広告を出す場所)を釣る」という手作業の契約をしていました。
【DSP(自動買い付けシステム)】 DSPは、あなたが雇った「凄腕の全自動バイヤー」です。あなたは彼に「予算は10万円。とにかく30代の女性の目に止まる良いマグロ(広告枠)だけを、安く仕入れてこい!」と命令(設定)するだけです。 すると、ユーザーがどこかのブログ(メディア)を開いた瞬間、市場で超高速のオークションが始まります。 「おっ!今ブログを開いたのは、過去にダイエットを検索した30代女性だぞ!この広告枠(マグロ)は絶対ウチに有利だ!ライバルが10円で入札してきたから、俺は11円で落札(表示)してやる!!」 このように、DSP(バイヤー)はあなたの代わりに何百万というサイトを監視し、AIの力で「あなたの設定したターゲットにピッタリのお客さん」が現れた瞬間だけを狙って、全自動で最安値で広告枠を買い叩いて表示してくれるのです。
ビジネスの現場での使い方
実際の現場で「DSP」がどう使われているのか、よくある3つの場面を見てみましょう。
「予算が余っているなら、Google広告だけでなく独自のDSPにも手を出してみよう」
- 裏にある意味・意図:
- 「普通のWeb広告は、みんなGoogleやYahooのシステムを使って出している(王道)。でも、よりマニアックな客層を狙ったり、Googleの届かない特殊なサイト面に広告を出したい時は、独自のアルゴリズムを持った『Criteo』や『MicroAd』といった専門の強力なDSP(バイヤー機械)を使うと、さらに多くの新しいお客さんを獲得できるぞ」
- メインの広告システムの「一歩先」の拡張手段としての活用提案。
「DSPの強みは、『枠(どこのサイトに出すか)』ではなく『人(誰に出すか)』をターゲティングできることだ」
- 裏にある意味・意図:
- 「昔は『有名なニュースサイトのトップページ(枠)』にポンと広告を置くことしかできなかった。でもDSPを使えば『過去に車のサイトを見たことがある30代男性(人)』であれば、その人がマイナーな個人ブログを開いていても、そこにピンポイントで車の広告を出す(追いかける)事ができるんだ!だから無駄打ちが圧倒的に少ないんだよ」
- 広告枠の価値が「場所」から「ユーザー属性」へと進化したというデジタルの本質。
「とりあえずDSPに月30万突っ込んで、AIの機械学習を回してみろ」
- 裏にある意味・意図:
- 「DSPの買い付けアルゴリズム(AI)は、最初はどのお客さんに広告を出せば売れるか分からなくて失敗する。でも、2週間くらい広告を出し続けると『ああ、金曜日の夜にスポーツサイトを見てる人に広告を出すと一番買ってもらえるな』とAIが自己学習して、どんどん賢く落札してくれるようになる。だから最初はちょっと我慢して予算を使って学習させろ」
- AI特有の「成長期間(最適化のための学習期間)」を見越した運用指示。
「SSP」との対の関係
DSPについて学ぶと、必ずセットで「SSP」という言葉が出てきます。これは「買いたい人」と「売りたい人」の違いです。
| 比較ポイント | DSP(買う側・広告主の味方) | SSP(売る側・メディアの味方) |
|---|---|---|
| 何の略? | Demand(需要・出したい)-Side Platform | Supply(供給・枠を提供したい)-Side Platform |
| 誰が使うシステム? | 広告を出してモノを売りたい「企業(広告主)」 | 自分のWebサイトに広告枠を設けて稼ぎたい「ブログ・メディア運営者」 |
| システムの目的(ワガママ) | ターゲットにピッタリな広告枠を、「できるだけ安く買いたい(出したい)!」 | 自分のブログの空き枠を、「できるだけ高く買って(表示して)ほしい!」 |
見分け方としては、「『俺の広告を出させてくれ!安く買わせろ!』と叫んでいる買い手が【DSP】。『ドヤ!俺のブログの広告枠、高く買ってくれ!』と叫んでいる売り手が【SSP】。この二人が0.1秒間で戦うオークション会場がアドエクスチェンジ」と覚えましょう。
まとめ
- DSPとは、広告主(企業)が広告を出したいと思った時に、設定したターゲットに対して「一番効果のある広告枠」をAIが全自動で探し出し、最安値で買い付けて(配信して)くれるシステムのこと。
- 人間がいちいち「このサイトに広告を出してください」と交渉するのではなく、システム(凄いバイヤー機械)にお金を預けておけば、勝手に光速のオークションで落札して広告を表示してくれる。
- 広告を出したい「企業側」の味方がDSP。逆に、自分のサイトの広告枠をなるべく高く売りたい「メディア(ブログ等)側」の味方のシステムが「SSP」と呼ばれる対の存在である。
今日できるミニアクション: 次にあなたがスマホでヤフーニュースやまとめブログを開いた時、画面の下や間に「広告画像(バナー)」がパッと表示されると思います。その表示の瞬間の「0.1秒」を意識してみてください。あなたがページを開いた瞬間に、裏側でブログ側(SSP)が「30代の男が来たぞ!10円で誰か買わんか!」と叫び、数多くの企業のDSPが「俺が12円で落札する!俺の広告を出せ!」と激しい入札バトルが行われ、見事勝利した企業のバナーが、今あなたの目の前に表示されているのです。この凄まじい「裏側の高速オークションプログラミングの世界」を想像すると、ただの広告が少し面白く見えてきませんか?