「ねえねえ、最近TikTokやYouTubeショートで、『猫が宇宙空間の背景でひたすらグルグル回ってる動画』に、変なBGMがついたやつめっちゃ多くない?」 「ああ、あの『猫ミーム』ね。昨日なんて、友達からLINEで『その猫がくるくる回るスタンプ』だけが送られてきたよ」 「一体あれは何が面白いんだ……?誰が最初に作り始めて、なんで全国の高校生がみんな真似してるの!?」

理由は全くありません。「なんとなく面白いから、みんながコピーして真似した」だけです。

このように、インターネット上で特定の画像・動画・フレーズが、まるでウイルスの感染や遺伝子のコピーのように爆発的に広がり、みんなのおもちゃとして消費される現象、「ネットミーム」について解説します。

ネットミームとは? 一言でいうと

一言でいうと、ネットミーム(Internet Meme)は「誰かが作った面白いネタが、ネット上の不特定多数の人々の手によってコピー・コラージュ(合成)・アレンジされながら、伝言ゲームのように次々と広まり、やがて万人が知る大きなトレンド(流行語)になっていく現象」のことです。

これを、「小学校のクラスで大流行する『変な踊り』」に例えてみましょう。

ある日、クラスのお調子者のA君が、休みの時間に「変な顔をしながら、タコのようにクネクネする謎の踊り」をしました。 それを見たB君たちが大爆笑し、「なんだそれウケる!」と言って、A君のマネをして一緒に踊り始めます(コピー・模倣・増殖)。 するとC君が、「ただ踊るだけじゃなくて、ほうきをギター代わりに持ちながら踊ったほうがもっと面白いぜ!」と勝手にアレンジ(パロディ改変)を加えます。 翌日には、誰が考えたダンスなのかという「元の起源」を知らない人まで含めて、クラス全員、さらには隣の学校の子供たちまでが「ほうきを持ったタコの踊り」を狂ったように踊りまくっている状態になります。

誰も命令していないのに、細胞の遺伝子(ジーン)のコピーのように、人の心から心へと勝手に伝染して広がる文化(ミーム:Meme)。これがインターネット上で起こるから「ネットミーム」と呼ぶのです。

ビジネスの現場での使い方

実際の現場で「ネットミーム」がどう使われているのか、よくある3つの場面を見てみましょう。

「企業の公式アカウントで、安易に『ネットミーム』に乗っかるのは炎上リスクがあるぞ」

  • 裏にある意味・意図
    • 「新人のSNS担当よ、今日流行っている『アニメの悪役がぶちギレている面白画像(ミーム)』に、自社商品の宣伝文句を合成してポストするのはやめとけ。ネット民(若者)に媚びを売ってバズりたい気持ちはわかるが、その画像、元の権利(著作権)は誰にあるんだ?ミームとしてみんなが勝手に使っている无法地帯のネタを、企業が商用利用(自分の金儲けのため)に使ったら、倫理的にも法的にも大炎上するぞ」
    • ネットの「お祭り騒ぎ(グレーゾーン)」に、スーツを着た大企業が不用意に参加してはいけないというコンプライアンスの警告。

「今回の新商品のCMは、ユーザーに遊んでもらえるように『ミーム化』を狙って振り付けを作ろう」

  • 裏にある意味・意図
    • 「昔みたいに、キレイなだけのテレビCMを流しても誰も見てくれない。今はTikTokで女子高生が『真似したくなる(踊りたくなる)』ような、少しダサくてキャッチーな音楽と振り付けを作ろう。それがうまくいってネットミームとして拡散されれば、1億円のCM費をかけなくても、ユーザーたちが勝手に何百万回も動画を作って宣伝してくれる(UGCによる爆発的拡散)からな!」
    • 企業側が意図的に「ミーム(バズの種)」を仕掛け、ユーザーの文化に溶け込もうとする現代のSNSマーケティングの極意。

「あのお笑い芸人、完全にネットミームとして消費されてるな」

  • 裏にある意味・意図
    • 「あの芸人の一発ギャグ、本人のネタ動画は全然再生されてないのに、その顔だけが切り抜かれて他のゲーム実況の動画のオチ(合成素材)として使われまくっているな。本人の意図とは全く違う、良くわからない面白文脈でネット民のおもちゃ(フリー素材)にされて広がっていく、これぞまさにミームの恐ろしさだよ」
    • 人間の思惑を超えて、コンテンツが一人歩きしてしまうインターネット文化の特異性。

日本の代表的な「ネットミーム」の歴史とバリエーション

ネットミームには画像だけでなく、テキストや概念など様々な種類があります。あなたが知っているものもきっとあるはずです。

ミームの形式代表的な例(※知らなくても全く問題ありません)バズった理由・使われ方
画像・動画ミーム(素材化)「猫ミーム」「チャージマン研!」「現場猫(ヨシ!)」インパクトのある顔や動きだけが切り取られ、別の悲惨な日常エピソードなどの「BB素材(背景透明化で合成できる素材)」として便利に使われた。
テキスト・構文ミーム(テンプレ)「5000兆円欲しい!」「○○なんだよなあ」「オタクくんさぁ…」言い回し(テキストの型)だけがテンプレート化され、言葉遊びとしてみんなが改変大喜利をするために使われた。
アスキーアート(AA)ミーム「やる夫」「モナー(オマエモナー)」2ちゃんねる(現5ちゃんねる)時代の古いミーム。文字の記号だけで作られたキャラクターが、感情を表現する手段として大流行した。

見分け方としては、「『この画像、元ネタの映画(アニメ)を知らないけど、なぜかTwitterのリプ欄でよく見るな(笑えるな)』と思ったら、それは完全にネットミームとして定着している証拠」と覚えましょう。

まとめ

  • ネットミームとは、インターネット上で特定の面白画像・短い動画・キャッチーなフレーズなどが、多くのユーザーによるパロディや模倣(コピー)を通じて、伝染病のような凄まじいスピードで流行・拡散していく現象のこと。
  • ミーム(Meme)の語源は、進化生物学者のリチャード・ドーキンスが提唱した「遺伝子(ジーン:Gene)のように、人間の脳から脳へとコピーされ、変異しながら受け継がれていく文化・情報」という学術用語である。
  • 現在では企業も、このネットミームの「圧倒的な拡散力」に目をつけ、若者がTikTokでいじって遊んだり、真似して踊りたくなるような「遊びの余白」を残したプロモーションを仕掛けるのがマーケティングの定番となっている。(※ただし著作権には注意が必要)

今日できるミニアクション: もしあなたが、自分のSNS(特にX/TwitterやTikTok)を開いたとき、数日連続で「全く同じ構造の構文(例:〇〇だけど質問ある?)」や「全く同じBGMがついたペットの動画」を別々の人から繰り返し目にしたとしたら、それは今まさに新しいネットミームが生まれ、社会に感染拡大している瞬間に立ち会っているということです。「ああ、これはくだらないけど、人間がいかに『他人の真似(同調)をしてみんなで盛り上がりたい生き物』なのかを証明している心理実験なんだな」という冷静な目で観察してみると、ネットの波にただ呑まれるだけでなく、少し違った面白い視点でSNSを楽しむことができます。