「来月から急遽、フランスの企業と新プロジェクトを始めることになった!誰か日常会話レベルでいいからフランス語が話せるヤツ、社内にいないか!?」 「ええと、エクセルの人事名簿には『名前』と『今の所属部署』と『入社年』しか書いていないので、顔が広そうな部長に片っ端から電話して聞いてみます!」 (……結局、誰も見つからず新しく外注することになったが、実は隣の部署の目立たない新人がフランス帰国子女だったことが半年後に判明)

「社員の誰がどんなスキルを持っているのか」、会社側が全然把握できていない……という悲劇は、古い企業あるあるです。 この「宝の持ち腐れ状態」を最新のITの力で劇的に解決し、社員の才能をフル活用する仕組みが「タレントマネジメント」(あるいはタレントマネジメントシステム)です。

今回はこの話題の人事トレンドを、「RPGゲームのパーティー編成」に例えてやさしく解説します。

タレントマネジメントとは? 一言でいうと

一言でいうと、タレントマネジメント(Talent Management)は「社員の顔写真だけでなく、持っている資格、これまでの経歴、得意な仕事、今後のキャリアの希望などを一つのシステム(データベース)に集約し、最適な人材配置や育成を行う科学的な人事マネジメントの手法」のことです。

これを、「RPGゲームのパーティー編成画面」に例えてみましょう。

昔の人事は、社員を「レベル10の戦士がいま第1営業部に3人いる」というように、「人数と職業」というザックリとした情報だけでエクセル管理していました。 しかし今の時代、戦士の中にも「防御が得意な戦士」や「魔法も少し使える戦士」など、才能(タレント)はバラバラです。

そこで「タレントマネジメントシステム」という専用のツールを導入します。 すると、タブレットの画面に全社員の「ステータス画面」が表示されるようになります。「山田さんは魔法(英語力)がレベル80!」「鈴木さんは防御(クレーム対応)が得意!」「佐藤さんは将来、僧侶(リーダー)になりたいと希望している!」という詳細なパラメーターがすべて可視化されます。 経営者や人事は、このステータス画面を見ながら「次のプロジェクトは魔法が強い敵が出るから、山田さんを引き抜いて新しいパーティーを組もう!」と、データに基づいた最強のチーム編成(適材適所)ができるようになるのです。

ビジネスの現場での使い方

実際の現場で「タレントマネジメント」がどう使われているのか、よくある3つの場面を見てみましょう。

「タレントマネジメントを導入して、勘と経験の人事異動から卒業しよう」

  • 裏にある意味・意図
    • 「今までは『あいつは元気があるから営業に行かせろ』『俺の勘ではこいつは伸びる』という、役員や人事の属人的な思い込み(お気に入り)だけで配属を決めてウマくいっていなかった。これからはシステムを使って、本人の適性テストの結果や過去の実績データ(数字)という根拠に基づいたハイテクな配置転換に変えていくぞ」
    • 不公平な「えこひいき人事」をなくし、データドリブンな組織への変革宣言。

「タレントマネジメントシステムの『カオナビ』を使って、優秀な人材の発掘をお願い」

  • 裏にある意味・意図
    • 「何千人も社員がいる大企業になると、全員の顔と名前すら一致しない。だから、顔写真つきで社員のスキルや自己アピールがパッと検索できる専門のクラウドツール(カオナビやSmartHRなど)を使って、『プログラミングができて、かつ中国語が話せるリーダー候補』を1クリックで全国の支社から見つけ出してくれ」
    • 巨大な組織に埋もれている原石(タレント)を、ITの力で瞬時に掘り起こす指示。

「タレントマネジメントは導入して終わりじゃない。データのメンテナンスが命だ」

  • 裏にある意味・意図
    • 「せっかく高いお金を出してピカピカのシステムを入れても、社員が自分の『今年新しく取った資格』や『来年やりたい仕事の希望』を毎月ちゃんと入力・更新してくれなければ、古い情報のままで使い物にならないゴミシステムになってしまう。社員に入力を習慣づけさせる運用ルールが一番大変なんだ」
    • 「ツールを入れただけで満足するな」という、HRテック導入時の絶対的な注意喚起。

「昔の人事情報システム(労務管理)」との違い

「それって、給与計算に使っている昔からある人事システムと何が違うの?」とよく勘違いされます。

比較ポイントタレントマネジメントシステム昔の人事情報システム(労務管理システム)
役割社員の「才能・能力・希望」を管理し、会社の売上(パフォーマンス)を上げるための「攻めのツール」社員の「住所・給与・勤怠」を管理し、法律に違反しないように正しく事務処理をするための「守りのツール」
例え話RPGの「最強のパーティーメンバーや必殺技の組み合わせを考える」ための戦略画面RPGの「宿屋の代金や、持っているお金(ゴールド)の計算に間違いがないか」をつける家計簿
現場での違い経営者や現場のマネージャー(事業部)が、チームビルディングのために毎日見る。人事部の給与計算担当者だけが、月末の支払い処理のときにしか見ない。

見分け方としては、「住所やマイナンバーといった『変わらない情報』を扱うのが古いシステム。今月どんなスキルを覚えたか、どんな悩みがあるかという『常に変化する能力の情報』を扱うのがタレントマネジメント」と覚えましょう。

まとめ

  • タレントマネジメントとは、社員一人ひとりの才能(スキルや経歴)をデータ化してシステムで一元管理し、最適な人材配置と育成を科学的に行うマネジメント手法。
  • どんぶり勘定の「人数合わせの異動」をやめ、RPGの「ステータス画面」を見ながら最強のパーティーを組むのと同じである。
  • 給与計算などの「守りのシステム」とは違い、社員の得意なこと(タレント)をフル活用して会社の利益を生み出すための「攻めのHRテック」として急速に普及している。

今日できるミニアクション: あなたの会社にタレントマネジメントシステムがあるなら、今日すぐに自分の「プロフィール(自己PR・保有資格)」欄を更新してみてください。もしシステムがない場合は、直属の上司との面談の際に「実は私、〇〇の資格を持っていて、将来は△△の仕事にも挑戦してみたいんです」と、自分の「隠れたステータス」を口頭でアピールしてみましょう。あなたがどんな能力を持っているのかを会社に「可視化」させることは、あなた自身のキャリアを有利に導く最強の自己防衛なのです。