「よし、このオンラインゲーム、あと少しでボスを倒してみんなでクリアできるぞ!」 「ああっ!味方のAの奴が、なんでこんなタイミングでわざと敵の目の前に突っ込んでいくんだ!案の定、一瞬で死んだぞ!」 「マジか……Aのミス(自爆)のせいで、チーム全体が全滅して負けちまった。あいつ、昨日もわざと同じことやってたぜ。完全に『トロール』だな。通報して蹴り出そうぜ」

ファンタジー映画の『ハリー・ポッター』や『ロード・オブ・ザ・リング』に出てくる「棍棒を持った醜くてデカい化物」のトロール。

なぜかこの言葉が、現代のインターネットやゲームの世界では、「他人の迷惑をかえりみず、わざと空気を壊して相手をブチギレさせる荒らし行為(またはその人)」を指す言葉として日常的に使われています。その恐ろしい生態を解説します。

トロール(Troll)とは? 一言でいうと

一言でいうと、インターネット用語のトロールは「真面目に議論している人や、一生懸命ゲームをプレイしている人たちの中にわざと混ざり込み、悪口や自爆行為で台無しにすることで『相手が怒り狂う姿(炎上)』を見て楽しむ、サイコパス的な荒らし(Griefing)行為」のことです。

これを、「北欧神話の意地悪な怪物(トロール)」に例えてみましょう。

村人たちが、みんなで協力して「川の向こうへ渡るための橋」を一生懸命に作っています。 そこに、大きくて醜い怪物(トロール)が現れました。彼は村人に恨みがあるわけでも、材料を盗みたいわけでもありません。単なるヒマつぶしの快楽主義者です。 トロールは、村人が完成させようとしている橋を、棍棒でドッカーン!とわざと壊します。そして、村人たちが「やめてくれ!なぜこんなひどいことをするんだ!」と泣き叫んで怒る姿を見て、「ギャハハ!奴ら怒ってやんの!面白え!」とゲラゲラ笑っているのです。

金銭目的(スパム)ではなく、「他人のマジメな感情を逆撫で(ハッキング)して悲しませること自体が目的」であるがゆえに、ネット上で神から最も嫌われる最悪の存在です。

※語源については、「怪物(Troll)のように嫌われ者だから」という説と、船から釣り糸を垂らして魚を挑発して引っ掛ける「流し釣り(Trolling)」から来た(相手の怒りを釣る)という2つの説が混ざり合って定着したと言われています。

ビジネスの現場での使い方

実際の現場で「トロール」がどう使われているのか、よくある3つの場面を見てみましょう。

「自社のSNSアカウントがトロールに絡まれたら、『Don’t feed the troll(餌を与えない)』だ」

  • 裏にある意味・意図
    • 「企業アカウントの投稿に対して『お前の会社の商品ゴミだな!潰れろ無能!』とメチャクチャな暴言(トロール行為)を吐いてくる奴が現れたとする。絶対に『そんなこと言わないでください!』と反論(マジレス)してはいけない。奴らは【お前の怒りや悲しむ姿というエサ(Feed)】を待っているんだから。正解は『ブロックして徹底的に無視する(飢え死にさせる)』ことだけだ」
    • ネットで20年前から言われている鉄則「荒らしはスルー(無視)せよ」のグローバル版の言葉。

「チーム内で『トロール』のような振る舞いをする社員は、プロジェクトを崩壊させるぞ」

  • 裏にある意味・意図
    • 「オンラインゲームだけでなく、実際の会社にもトロールは潜んでいる。会議でみんなが前向きに解決策を話し合っているのに、わざと『でもそれって、社長が本気じゃないから無駄っすよ。俺ら頑張るだけ損じゃないすか(笑)』と、冷や水(毒)をぶっかけて、周りのモチベーションを根こそぎ破壊することを楽しむ奴だ。こういうサイコパスは、優秀でもチームから即刻外すべきだ」
    • コミュニティの「心理的安全性(やる気・雰囲気)」を一人で破壊する存在への強烈な危機感。

「意図的な不正(トロール)か、ただの初心者(下手くそなだけ)かを見極めろ」

  • 裏にある意味・意図
    • 「ゲームの運営側が、他のプレイヤーから『あいつトロール(わざと邪魔なプレイ)だ!バン(追放)してくれ!』と通報を受けたとする。しかしログを調べると、そのプレイヤーは今日ゲームを始めたばかりで、【わざと負けたのではなく、操作が分からなくて結果的に邪魔になってしまっただけ】だったりする。初心者をトロール扱いして追い出せば、そのゲームの新規ユーザーは一生増えず過疎って終わるぞ」
    • 「悪意のある荒らし」と「単なるスキル不足」を混同してリンチしてしまう、コミュニティの腐敗への警告。

「スパム業者」との違い

「迷惑なやつ(荒らし)」を表現する言葉として、前回解説した「スパム」とどう違うのか整理しておきましょう。

比較ポイントトロール(愉快犯・荒らし)スパム(営利目的の業者)
主な目的(なぜ荒らすのか?)「お前を怒らせて、悲しむ顔(パニック)が見たいからだ!」という自己満足(愉快犯)。「お前たちに全く興味はない。とにかく広告費(小銭)が欲しいだけだ!」というビジネス。
行動のパターン人のトラウマをえぐる暴言や、ゲームでのわざとらしい自殺(自爆)で空気を凍らせる。(手動で執拗に絡む)バズっている投稿に、無関係なアラビア語や怪しいURL(リンク)を貼り付けて埋め尽くす。(botによる全自動)
対処法怒って反論すると、相手をさらに喜ばせるだけ。絶対に反応せず、ミュートか通報言葉は通じない単なる機械。無言でブロックし、リンクを絶対に踏まない

見分け方としては、「『ギャハハ!俺の嫌がらせで怒ってやんの!』と感情的な嫌がらせをしてくるのがトロール。『はいURLポチー!はい1円儲かったー!』と感情なくロボットのようにゴミを撒き散らすのがスパム」と覚えましょう。

まとめ

  • ネット上の「トロール」とは、オンラインゲームやSNSなどで、わざと過激な発言や迷惑なプレイ(自爆行為など)を行い、真面目に参加している人間を怒らせたり悲しませたりすること自体を快楽とする「悪意を持った荒らし(ユーザー)」のこと。
  • 北欧神話に登場する「人間に意地悪をする粗暴な怪物(トロール)」のように、コミュニティの平和をぶち壊して喜ぶ存在である。
  • 彼らに論理的な言葉は通じない。彼らのパワーの源は「正義感からの反論」や「怒りの悲鳴」であるため、トロールに絡まれた場合は「Don’t feed the troll(トロールにエサ(反応)を与えるな)」という世界共通の鉄則を守り、完全無視(ブロック)するのが唯一の正解である。

今日できるミニアクション: あなたがもし、好きなYouTubeの生配信やSNSを見ていて、明らかにアンチ(トロール)が「こいつ頭悪いな!声もキモいし引退しろよ!」と酷い暴言を吐いているのを見かけたとします。あなたは正義感から「そんなひどいこと言うな!お前の方がキモいだろ!」とリプライ(反論)して戦いたくなるかもしれません。しかし、その瞬間にあなたはトロール(怪物)にエサを与え、怪物をさらに大きく、元気に育ててしまっています。彼らは「やった!一般人が俺の言葉に怒って食いついてきたぞ!」と大喜びでさらに暴れます。自分の「怒りの感情」をグッと飲み込み、何も言わずに【ブロック(ミュート)ボタン】を無表情で押す訓練(最強のスルー・スキル)を身につけてください。それが平和への一番の近道です。