「今度出す新しいダイエットサプリの広告のキャッチコピーだけど、『1ヶ月でマイナス5キロ!』がいいか、『飲むだけであの頃の体型に!』がいいか、どっちにする?」 「うーん、若者向けなら前者の『マイナス5キロ(赤色)』がいいと僕は思います!」 「いや、俺は後者の『あの頃の体型(青色)』の方がエモくて好きだな!よし、会議を3時間延長して多数決で決めよう!」
Webマーケティングの世界で一番やってはいけないのが、「偉い人(社長)の好み」や「会議室での多数決」でデザインを決めることです。
正解を知っているのは、会議室のおじさんたちではなく「画面を見ている本物のお客さん」だけです。だからこそ、実際に両方を見せてデータで決着をつける「A/Bテスト」という最強のデジタル魔法が使われるのです。
A/Bテストとは? 一言でいうと
一言でいうと、A/Bテスト(エービーテスト)は「Webサイトや広告の一部(文言、色、写真など)だけを変えた【Aパターン】と【Bパターン】を用意し、ネットにアクセスしてきたユーザーにランダムに半分ずつ見せて、どちらがより良い成果(購入や登録など)を出したかをデータで比較・検証する手法」のことです。
これを、「スーパーの試食コーナー」に例えてみましょう。
あなたはお肉のソースのパッケージを担当しています。「甘口(Aパターン)」と「辛口(Bパターン)」、どちらをメインの棚に置くか会議で揉めました。
昔のやり方は、社長が「俺は辛口が好きだからBだ!」と勘で決めて、大失敗するギャンブルでした。
しかし「A/Bテスト(試食コーナー)」では、会議で悩みません。すぐにスーパー(ネット)の入り口にマネキンさんを立たせて、入ってきたお客さんの半数にはA(甘口)を、もう半数にはB(辛口)をいきなり食べさせます(画面を見せます)。 そして1日経った後、「Aを食べた人は10人中8人がお肉を買ってくれたけど、Bは2人しか買わなかったぞ。よし、文句なしでAパターンの大勝利だ!明日から全部Aのパッケージにするぞ!」と、お客さんが下した「実際の行動データ」という絶対的な証拠をもって正解を決めるのです。
ビジネスの現場での使い方
実際の現場で「A/Bテスト」がどう使われているのか、よくある3つの場面を見てみましょう。
「ボタンの色でダラダラ揉めるくらいなら、今すぐA/Bテストを回そう」
- 裏にある意味・意図:
- 「どっちのデザインがかっこいいかなんて、お前たちの主観で話し合っても時間の無駄だ。Webサイトなら『赤いボタン』と『緑のボタン』の2つの画面を一瞬で作って、お客さんにランダムに見せることができる(ツールがある)んだ。1万人にアクセスさせて、実際にクリック率が高かった(売上が上がった)方を正式なデザインとして採用(実装)しろ」
- 「推測(勘)」を排除し、客観的な「データ」に基づいた意思決定を促す指示。
「A/Bテストをやるときは、一度に変える要素(変数)は絶対に1つに絞れ」
- 裏にある意味・意図:
- 「Aパターンは『キャッチコピーと、ボタンの色と、モデルの写真』を全部変えて、Bパターンと比べよう!……ってバカ!それじゃあ、Aが勝ったとしても『キャッチコピーが良かった』のか『写真が良かった』のか、勝因が分析できなくて次につながらないだろ。A/Bテストの鉄則は『ボタンの色だけ』など、比べる場所(変数)をたった一つだけにして実験することだ」
- 実験の精度を上げるための、科学者と同じ厳格なルール設定。
「永遠にA/Bテストをやり続ける文化(グロースハック)がウチの強みだ」
- 裏にある意味・意図:
- 「一度Aパターンが勝ったからといって満足してはいけない。次は『勝ったAパターン(赤色)』と、『新しいCパターン(黄色)』で再び戦わせて、常に今よりもクリック率が高くなるデザインを探し続けるんだ。この終わりのない地道なテストの繰り返し(PDCA)こそが、バズるよりも確実にお金を稼ぐ最強のWebマーケティングなんだ」
- 「一発当てる」のではなく、「ミリ単位で改善し続ける」という企業の執念。
「多変量テスト」との違い
A/Bテストに慣れてくると、マーケターは欲張って「もっと色々なパターンを一度にテストしたい!」と言い出します。
| 比較ポイント | A/Bテスト | 多変量テスト |
|---|---|---|
| 役割 | 「AかBか」という大きな方針の決着をつける(シンプルなタイマン勝負)。 | 見出し、文章、ボタンなど複数の要素を細かく組み合わせて「完璧な方程式」の決着をつける(複雑な総当たり戦)。 |
| テストするパターンの数 | 基本的に「2つ(多くても3〜4つ)」。 | 「見出し2種」×「ボタン3種」=「合計6パターン!」など、めちゃくちゃ多くなる。 |
| 必要な条件(難易度) | 1日数百人のサイトアクセスがあれば、すぐに結果(勝敗)がわかる。 | パターンが多すぎるため、月に何十万人という超・大量のアクセスがないと結果が出ない(難しい)。 |
見分け方としては、「『赤いボタンと青いボタン、どっち?』と1箇所だけ比べるのがA/Bテスト。『赤ボタン×写真A』、『青ボタン×写真B』、『赤ボタン×写真B』……と全ての組み合わせ(魔法陣)を一気に試すのが多変量テスト」と覚えましょう。普通の会社はA/Bテストだけで十分すぎるほどの成果が出ます。
まとめ
- A/Bテストとは、Webサイトや広告の特定の1箇所だけを変えた「Aパターン」と「Bパターン」を用意し、実際のユーザーにランダムに見せて、どちらがより成果(購入やクリック)を出すか比較するテストのこと。
- スーパーの試食で「甘口」と「辛口」の両方をランダムに食べさせ、実際に売れた方を正式採用するようなもので、社長の勘や会議の多数決よりも100倍正しい答えがわかる。
- ネットの世界ならではの「すぐに画面を差し替えられて、すぐに結果の数字がわかる」という特性を活かした、最も地道で、最も確実に売上を上げる改善手法(グロースハック)である。
今日できるミニアクション: 実はあなたも、仕事のメールで「A/Bテスト」を実践できます。例えば、お客さんにアポを取るメールを送るとき。いつも「お打ち合わせのお願い」という普通のタイトル(Aパターン)で送っているなら、今日は5社だけ「【ご相談】〇〇のコスト削減について」という具体的なタイトル(Bパターン)で送ってみてください。そして、「どっちのタイトルの時の方が、早く返信(クリック)が来たか」を自分の手元で集計(テスト)するのです。日常のちょっとした「言葉のABテスト」が、あなたの営業成績を劇的にアップさせる最強の武器になります。