「あー、今日のお昼ごはんは何にしようかな。あ、あっちのラーメン屋はガラガラで誰も客がいないな。でも、こっちのタピオカ屋は50人も大行列を作ってるぞ!」 「ねえねえ、あの行列すごいね!絶対に美味しいはずだよ!私たちも並ぼうよ!」 「え?でも君、さっきまで『喉渇いてないし、甘いものは太るから絶対嫌だ』って言ってたじゃん!」 「それはそうだけど……でも、あんなにみんなが買ってるんだよ!?今買わなきゃ絶対に損する気がするの!」

人間は、論理的な思考をする生き物ではありません。「みんながやっているから」というただそれだけの理由で、急に「すごい価値があるもの」だと錯覚してしまう生き物です。

この、行列が行列を呼ぶ恐ろしい群集心理の魔法、「バンドワゴン効果」について解説します。

バンドワゴン効果とは? 一言でいうと

一言でいうと、バンドワゴン効果(Bandwagon Effect)は「『みんなが持っているから自分も欲しい』『今一番売れているから間違いない』というように、多数派の意見や流行(トレンド)に乗ることで安心感を得ようと同調し、需要がさらに需要を呼ぶ行動経済学のバイアス(偏見)」のことです。

これを、まさに語源である「お祭りの先頭を走る、楽隊のパレードカー(バンドワゴン)」に例えてみましょう。

街中でお祭りが始まり、ガンガンに音楽を鳴らした派手なパレードカー(バンドワゴン)がやってきました。 パレードカーの後ろには、すでに「ワーワー!」と熱狂した群衆(たくさんの人)がくっついて歩いています。 あなたはそのお祭り自体に大して興味がなかったとしても、「なんかみんながすごく盛り上がってるぞ!私も遅れないようにこの大きな波(バンドワゴン)に乗らなきゃ!」と、意味もわからず走って群衆の列に加わってしまいます。

このように、商品そのものの味やスペック(原価)ではなく、「みんなが並んでいる(熱狂している)」という【波の大きさ】自体に価値を感じて、飛び乗ってしまう(同調してしまう)心理を利用したのが、バンドワゴン効果です。

ビジネスの現場での使い方

実際の現場で「バンドワゴン効果」がどう使われているのか、よくある3つの場面を見てみましょう。

「映画のキャッチコピーは、内容より『全米が泣いた!観客動員数No.1』を一番デカくしろ!」

  • 裏にある意味・意図
    • 「映画のポスターで『この映画は最新のCGを使っていて…』なんて論理的に説明しても誰も見に来ない。一番効果があるのは、『週末興行収入No.1!』『すでに300万人が熱狂!』というバンドワゴン効果(数字を使った同調圧力)だ!『みんなが見てるなら、私も話題に乗り遅れないように見に行かなきゃ(FOMO)』と思わせるのが最強のマーケティングなんだよ」
    • 「売れている事実」が最大の宣伝になる(勝ち馬に乗らせる)というエンタメ業界の鉄則。

「リリース直後は、あえてサクラを使ってでも『行列』や『売り切れ』を演出するんだ」

  • 裏にある意味・意図
    • 「新しいスマホアプリをリリースした時、誰もダウンロードしていない『過疎状態』を見られたら、バンドワゴン効果の逆(誰もやってないクソゲー)が働いて即死する。だから最初は、無料のキャンペーンを打ちまくって強引に初日で『100万ダウンロード!ランキング1位!』というお祭り騒ぎ(大行列)を作れ。その大きな熱狂の渦を作れば、あとは勝手に一般の客が吸い寄せられてくる」
    • 「ゼロからイチ」の波(モメンタム)を強引に作ることで、群集心理に点火するという立ち上げ戦略。

「会議で『他社さんもみんな続々と導入してますよ』の一言が一番効くぞ」

  • 裏にある意味・意図
    • 「保守的な日本企業の役員に新しいシステムを提案する時、『これを入れるとウチの利益が20%上がります』と説明しても、『ウチが最初の実験台(ファーストペンギン)になるのは嫌だ』と渋る。そこで『ちなみに、御社のライバルのA社もB社も、みんなもうこれ導入して大成功してます(バンドワゴン)』とささやけ。絶対に『なに!みんなやってるのにウチだけ遅れているのか!すぐに入れろ!』と首を縦に振るぞ」
    • リスクを恐れる日本人特有の「みんなと一緒なら安心」という強烈な同調圧力を利用した営業トーク。

「スノッブ効果(逆の心理)」

みんなが持っているから欲しい(バンドワゴン効果)の完全に「真逆」の心理も存在します。セットで覚えましょう。

比較ポイントバンドワゴン効果(みんなと一緒がいい)スノッブ効果(みんなと被るのは絶対嫌だ)
お客さんの心の声「みんながこれを買ってるなら安心だ!流行遅れになりたくないから群れに乗るぜ!「なんだよ、みんなこのバック持っててダサいな。俺は誰ともかぶらない特別なものがいい!
企業のアプローチ「No.1!」「100万人が愛用!」と規模のデカさ(流行)をアピールする。「世界で10個限定!」「会員様だけの特注品」と希少性(被らなさ)をアピールする。
売っているモノ映画、タピオカ、ベストセラー本、iPhoneなど(大衆向け商品)限定ハイブランド、特注スポーツカーなど(マニア・富裕層向け)

見分け方としては、「『みんなが買ってるなら俺も!』と同調するのがバンドワゴン。『みんなが買ってるなら俺はいらねえ!』と天邪鬼になるのがスノッブ効果(※次の記事で解説)」と覚えましょう。

まとめ

  • バンドワゴン効果とは、「みんなが支持している(行列ができている、流行っている)」という状況そのものが、その対象(商品やサービス)の価値を不当に高く見せ、さらに多くの人を雪だるま式に引き寄せる心理効果のこと。
  • 人間は情報を持たない時(何を買えばいいか迷った時)に、「多数派が選んでいるものなら、きっと安全で良いものに違いない」と考える「同調のバイアス」を持っている。
  • 企業が広告で「売上No.1!」「全米が泣いた!」「シリーズ累計1000万部突破!」といった「巨大な数字」をアピールするのは、商品の質ではなく「これだけ多くの人がお祭りに参加していますよ(あなたも勝ち馬に乗りませんか?)」という群集心理をガンガンに刺激するためである。

今日できるミニアクション: あなたがAmazonや楽天で買い物をするとき、商品名に「【楽天ランキング第1位獲得!】」という冠がついている商品を見ると、他社の似たような商品よりも「あ、これが一番確実(安心)だな」と無意識に選んでしまいませんか?それはあなたがバンドワゴン(お祭りのパレードカー)に飛び乗った瞬間です。次に「ランキング1位」「売上No.1」という文字を見かけたら、「おっと、これは私に『みんなと同じものを選ばせて安心させよう』とするバンドワゴン効果の罠だな」と立ち止まり、本当に自分に必要な機能だけを見て比較する訓練をしてみてください。