「ウチの化粧品、本当に成分が良くて最高の自信作なんだ!だからHPで『私が作った最高の化粧品です!絶対にシミが消えます!』ってデカデカと社長の私が宣伝してるのに、全然売れないんだよな……」 「社長、そりゃそうですよ。売ってる本人が『ウチの品は最高だ』って言うのは当たり前でしょ。お客さんは『どうせ売りたいだけのウソ(ポジショントーク)だろ』と鼻で笑ってますよ」 「ええっ!じゃあどうすればいいんだ!」 「社長が黙って、代わりに『一般の主婦』に、【1週間使ったら本当にシミが消えて驚きました!】という口コミ(レビュー)を書いてもらってください。それだけでバカ売れしますよ」

企業からの直接のメッセージ(CMや広告)には見向きもしないのに、なぜか人は「SNSやAmazonのレビュー」には絶大な信頼を置きます。

この、「当事者が直接言うよりも、第三者(無関係な人)が間接的に言う情報の方が、はるかに信憑性が高くなる」という強力な心理パターンのことを「ウィンザー効果」と呼びます。

ウィンザー効果とは? 一言でいうと

一言でいうと、ウィンザー効果(Windsor Effect)は「マーケティングやコミュニケーションにおいて、自分自身でアピールするよりも、口コミやレビュー、第三者機関の評価(★の数など)を介して間接的に伝える方が、圧倒的に相手の信頼を獲得しやすいという法則」のことです。

これを、「ラーメン屋の看板とおばちゃんの噂話」に例えてみましょう。

ラーメン屋のオヤジが、店の前にデカデカと「オレのラーメンは日本一美味いぞ!!絶対に食ってけ!」という看板を出していても、あなたは「はいはい、自分で言ってるだけね」と冷たい目で素通りします。 オヤジ(当事者)には「ラーメンを売りたい(儲けたい)」という下心(利害関係)があることが見え見えだからです。

しかし、あなたがその店の前を通りかかった時、真横を歩いていた見ず知らずの近所のおばちゃん二人が、 「ねえ、ここのラーメン屋、外観はボロいけどスープが信じられないくらい美味しいのよ!先週も来ちゃったわ」 と内緒話をしているのが耳に入りました。 するとあなたは、「えっ!?このおばちゃんたちはこの店を褒めても1円も得しないのにわざわざ褒めている。ってことは、『本当に美味い店』なんだ!絶対に食べなきゃ!」と猛烈に信じ込み、店に飛び込んでしまうのです。 これがウィンザー効果(第三者の声の魔法)です。

ビジネスの現場での使い方

実際の現場で「ウィンザー効果」がどう使われているのか、よくある3つの場面を見てみましょう。

「HPに『お客様の声(導入事例)』がないと、ウィンザー効果が働かず売れないぞ」

  • 裏にある意味・意図
    • 「企業のシステム開発(BtoB)のホームページで、『我が社の技術力は世界一です!』と自画自賛ばかり書くな。一番大事なのは、実際にシステムを使ってくれたお客さんにインタビューして『このシステムを入れたら残業が半分になりました(A社 〇〇様)』という【第三者の声】のページを作ることだ。他の企業は、ウチではなくその【客の声】だけを信じて契約を決めるんだからな!」
    • BtoBマーケティングにおける「導入事例(ケーススタディ)」の絶対的な重要性。

「YouTuberへの案件提供は、ウィンザー効果を殺さないように気をつけろ」

  • 裏にある意味・意図
    • 「人気のインフルエンサーにお金を払って商品を宣伝してもらう時、『台本通りに、100%うちの商品を褒めちぎってください!』と指示するのは三流だ。それではステマ(企業に言わされてる感)だとバレて誰も買わない。ウィンザー効果を生かすなら、インフルエンサーの率直な意見として『ここは微妙だったけど、ここはすごく良かった!』と本音っぽくレビュー(第三者としての客観性)をしてもらうことが、一番売上につながるんだ」
    • 「利害関係がない(本当の口コミだ)」と思わせることが、この効果の最大のキモである。

「上司を褒める時は、直接言うよりウィンザー効果を使え」

  • 裏にある意味・意図
    • 「課長に向かって直接『課長、今日のプレゼン最高でした!』とゴマをすっても、『こいつ、俺に媚を売って出世したいだけだな』と警戒されるだけだ。そうではなく、隣の部署の部長に『ウチの課長の今日のプレゼン、本当に勉強になったんですよ!』と少し大きめの声でこっそり語れ。それが部長の口から『おい課長、今日お前の部下がお前のことメチャクチャ尊敬して褒めてたぞ』と間接的に伝わった瞬間、課長は嬉しくて涙を流す(お前を評価する)ぞ」
    • 職場の人間関係(根回し)においてもそのまま使える、最強のコミュニケーション術。

「バンドワゴン効果」との違い

口コミによって人が動く心理には、もう一つ別の「バンドワゴン効果」というものがあります。

比較ポイントウィンザー効果(第三者の客観性)バンドワゴン効果(みんなやってる安心感)
信じてしまう理由(バグ)「企業(売り手)じゃない無関係な人が言ってるから、嘘のはずがない!信じよう!」みんなが並んでる(支持してる)んだから、絶対に良いもののはずだ!私も乗らなきゃ!」
具体的な例カカクコムやAmazonの「一般ユーザーの星5レビュー」お店の前の異常な長さの「大行列」や、「今年一番売れてる!」という言葉。
心理の焦点発信者が「自分と利害関係のない第三者であること」が重要。発信者の質より「数・群れ(みんなが選んでいること)」が重要。

見分け方としては、「『このオバちゃんが美味しいって言ってるから信じる!』のがウィンザー効果。『100人が並んでるから美味しいはずだ!』がバンドワゴン効果」と覚えましょう(※後述の記事で詳しく解説します)。

まとめ

  • ウィンザー効果とは、情報発信者本人(企業)が自ら「私すごいんです!」とアピールするよりも、利害関係のない第三者(インフルエンサーや一般客の口コミ)が「あの人すごいよ」と間接的に褒める方が、相手からの信頼度が劇的に高まる心理効果のこと。
  • 人間は「ものを売りつけようとする企業」の言葉には無意識に強い警戒心(バリア)を張っているが、「利害関係のない一般ユーザーのレビュー」にはバリアを下ろしてスッと信じ込んでしまう。
  • BtoBの「導入事例インタビュー」や、ECサイトの「カスタマーレビュー(星の評価)」、SNSでの「UGC(ユーザーのつぶやき)の拡散」など、現代のマーケティングで最も企業が喉から手が出るほど欲しがっているものの正体がこれである。

今日できるミニアクション: あなたが仕事で新商品のPR文章を書く時、あるいはSNSで自分の活動を宣伝する時、「自分がどれだけ頑張ったか」「どれだけスペックが高いか」を主語にして語るのをやめてみてください。代わりに、「昨日、この商品を使ってくれたお客様から、『毎日が少し楽しくなった』という嬉しいメールをいただきました」と、「誰か(第三者)がどう喜んだか」をメインの文章にするのです。主語を「私(企業)」から「第三者(顧客)」に変えるだけで、相手の心への刺さり方(ウィンザー効果)が10倍変わることを実感できるはずです。