「あー、1時間おきにX(Twitter)やインスタを見ないと落ち着かない!もし私の知らないところで、友達同士だけで盛り上がってたらどうしよう……」 「おっ、あの有名なインフルエンサーがおすすめしてる限定のリップ、あと【残り3個】だって!急いで買わないと売り切れちゃう!私だけ流行に乗り遅れるのは絶対に嫌だ!」

現代人は、常に「スマホからの通知」に怯え、急き立てられています。

「自分だけが楽しい世界からハブられている(置いていかれている)のではないか?」という強烈な不安と焦りを表す言葉であり、現代で最も強力なマーケティングの武器となっている「FOMO(フォーモ)」について解説します。

FOMOとは? 一言でいうと

一言でいうと、FOMO(Fear Of Missing Out:見逃すことへの恐怖)は「SNSの普及によって生まれた、『自分以外の誰かが有益な情報や楽しい体験を得ているのに、自分だけがそれを逃しているかもしれない』という心理的な不安・焦りを指す言葉」です。

これを、「みんなが持っている限定品のゲーム機」に例えてみましょう。

学校で、新しく発売されたゲーム機が大流行しています。 クラスの友達はみんな集まって「昨日のあのゲーム、めちゃくちゃ面白かったよな!」と盛り上がっています。 あなたは、そのゲーム機を持っていません。 すると、あなたの心の中に「やばい!自分だけがクラスの話題についていけない!このままだと友達の輪からハブられて孤立してしまう!(これがFOMOの恐怖)」という激しい焦りが生まれます。 本当はそのゲームにそこまで興味がなくても、「仲間外れになりたくない(取り残されたくない)」という一心から、親に泣きついて無理やりゲーム機を買ってもらいます。

企業は、この「人間が群れから外れることを極端に恐れる本能(FOMO)」を意図的に刺激し、冷静な判断力を奪って、「今すぐ買わないとヤバい!」と【衝動買い】を誘発するプロフェッショナルなのです。

ビジネスの現場での使い方

実際の現場で「FOMO」がどう使われているのか、よくある3つの場面を見てみましょう。

「カゴ落ちを防ぐために、『あと3時間でセール終了!』というFOMOタイマーを設置しろ」

  • 裏にある意味・意図
    • 「お客さんが商品をカートに入れて、買うかどうか迷っている時、『いつでも買えますよ』という優しいUIにするな。画面の上に【赤字でカウントダウンタイマー(チクタク…残り2時間59分)】を表示させろ!そうすれば、お客さんは『うわあ!今買わないと、この安いチャンスを永遠に逃してしまう(大損してしまう)!』とFOMO(焦り)のパニックに陥り、慌てて決済ボタンを押すんだ」
    • 「期間限定・数量限定」という煽り文句を使った、FOMOマーケティングの最も王道の手法。

「『今、あなたと同じ都道府県の30人がこの商品をカートに入れています』というポップアップを出せ」

  • 裏にある意味・意図
    • 「ホテルの予約サイトでよく見るテクニックだ。部屋を見ているお客さんに『今、他に5人がこのページを見ています。最後の1部屋です!』という通知(誰かが横取りしようとしている情報)を出せば、お客さんは『やばい!他のリア充たちに、この素晴らしい部屋を取られてしまう!急げ!』と強烈なFOMOを感じて即決するんだ。ライバルの存在を匂わせて焦らせろ」
    • 「みんなやっている(社会的証明)」と「奪われる恐怖」を組み合わせた、予約サイトの常套手段。

「完全招待制にして、『選ばれた人しか入れない』というFOMOをあえて作れ」

  • 裏にある意味・意図
    • 「数年前に流行った『Clubhouse(クラブハウス)』というアプリみたいに、最初は誰でも登録できるようにするな。『既存の会員から招待された2人だけしか入れない』という制限を儲けろ。そうすると、外にいる人たちは『うわ!中で芸能人が内緒話をしてるらしい!私だけ聞けないなんて耐えられない!招待枠をメルカリで買ってでも入りたい!』という究極のFOMO(疎外感からの渇望)を生み出すことができるんだ」
    • あえて「閉鎖的な壁」を作り、外にいる人間に「中に入りたい」と熱狂させるブランド戦略。

「JOMO」との対の関係

近年、このFOMO(焦り)に疲れた人たちの間で、「真逆の生き方」を指す言葉がブームになっています。

比較ポイントFOMO(Fear Of Missing Out)JOMO(Joy Of Missing Out)
頭文字の意味Fear(恐怖、焦り)Joy(喜び、心地よさ)
心理状態「やばい!私だけ呼ばれてない!SNS見なきゃ!限定品買わなきゃ!」という強迫観念でスマホに縛られている状態「へえ、みんなオンライン飲み会やってんだ。私は家で一人でゆっくり本読んでる方が幸せだから行かないわ」という情報から自分を切り離す喜び
現代のトレンド企業がモノを爆売りするために、意図的に煽り続ける「心の病(ストレス)」。デジタルデトックスなど、他人のSNSを気にせず「自分だけの時間を大切にする」次世代の良い価値観。

見分け方としては、「他人のリア充投稿を見て『私だけ乗り遅れている!』とスマホを握りしめて冷や汗をかくのが【FOMO:フォーモ】。スマホの電源を切って、『みんな勝手に騒いでなさい。私は一人が一番最高だわ』と温かいお茶を飲むデジタルデトックスの精神が【JOMO:ジョーモ】」と覚えましょう。

まとめ

  • FOMO(見逃す恐怖)とは、「自分だけが良い経験やお得な情報から取り残されているかもしれない」という、現代人がSNSを通じて抱きやすい強烈な不安や焦燥感のこと。
  • 「今から24時間限定セール!」「みんなこれを買っています!」「残り在庫わずか1点!」といった企業の広告の煽り文句は、すべて見ている人の「FOMO(このチャンスを逃したら損をするという本能的な恐怖)」を刺激して冷静さを奪うためのマーケティングの罠である。
  • このFOMOに操られ続けると、本当に必要のないインフルエンサーの服を買ったり、行きたくない飲み会に参加し続けることになり、心が疲弊してしまう。最近ではあえて情報から離れる「JOMO(見逃す喜び)」が提唱され始めている。

今日できるミニアクション: あなたのスマホに入っている、通販アプリやニュースアプリの「プッシュ通知」の設定画面を開いてみてください。「〇〇さんがライブ配信を開始しました!」「【VIP限定】本日終了のシークレットセール!」といった、あなたを焦らせる(FOMOを煽る)通知が1日に何十回も鳴っていませんか?企業の狙いは、あなたの「取り残されたくない」という弱点をついてアプリを開かせることです。今日だけ、思い切って「すべてのプッシュ通知をオフ」にしてみてください。「なんだ、SNSを半日見なくても、世界から何も取り残されないし、むしろ平和じゃないか(JOMO)」と気づくことができれば、無駄遣いは激減します。