「ウチの新しい化粧品、女性向けのインスタに毎月100万円も広告を出して宣伝してるのに、全然売れないぞ。なぜだ!」 「社長、広告を見て『いいな』と思ったお客さんは、そのあと絶対に『口コミサイト』を検索(比較)しますよね。でもウチの商品、まだ新しくて口コミが1件も書いてないから、そこで不安になって皆どっかに行っちゃう(離脱する)んですよ……」
企業は「お客さんは広告を見たら、魔法にかかったようにすぐ買ってくれる」と勘違いしがちです。しかし現実のお客さんは、検索し、疑い、比較し、迷ってからやっと買います。
この「お客さんが商品を知ってから、買うまでの長〜い心の旅と行動のプロセス」を、スゴロクのように目で見えるように描いた地図を「カスタマージャーニーマップ」と呼びます。今回はマーケティングの必須兵器を解説します。
カスタマージャーニーマップとは? 一言でいうと
一言でいうと、カスタマージャーニー(顧客の旅)マップとは「お客さんが、初めて自社のことを知ってから、お店に行き、商品を買い、ファンになってくれるまでのすべての行動段階において、『どんなところで情報を見て(接点)』『どんなことにつまずいているか(感情の起伏)』を整理して一枚の表に書き出した地図」のことです。
これを、「小学生の”遠足のしおり”(あるいはすごろくマップ)」に例えてみましょう。
マーケティングが下手な会社は、「12時に山頂(購入)!」という一番オイシイ結果しか見ていません。 しかし「カスタマージャーニーマップ」を使う会社は、すごろくのようにスタート地点からゴールまでの全マス目を細かく書き出します。
- 【出発前(認知)】:朝礼で遠足の話を聞いてワクワクする(=インスタで広告を知る)
- 【バスの中(興味・比較)】:隣の席の子とおやつの話で盛り上がる(=友達にLINEで相談したり価格コムを見る)
- 【山登り開始(検討の壁)】:急勾配で疲れ果ててテンションが下がる(=★ここ重要。サイトの登録画面の入力が面倒でイライラしている!)
- 【山頂到着(購入)】:お弁当を食べてめちゃくちゃハッピー!(=商品が届いて歓喜する)
このように、お客さんの感情が「上がったり下がったりする旅の道のり」を地図にすることで、企業側は「そうか!登録画面でイライラして(テンションが下がって)帰っちゃってる人が多いから、入力フォームを改善しよう!」と、買う前に逃げられてしまう本当の弱点(ボトルネック)を発見できるのです。
ビジネスの現場での使い方
実際の現場で「カスタマージャーニーマップ」がどう使われているのか、よくある3つの場面を見てみましょう。
「バラバラに広告を打つ前に、まずは絶対にカスタマージャーニーマップを作りましょう」
- 裏にある意味・意図:
- 「営業部は『テレビCMを打て!』と言い、WEBチームは『SEO対策だ!』とバラバラなことを言っている。彼らは『お客さんがどのルートを通ってウチに辿り着くのか』という地図(ジャーニー)を全員で共有していないから揉めるんだ。まずは一枚の地図を作って、『お客さんは最初にYouTubeを見るから、そこに全予算を突っ込むのが正解だね』と全員の目線を合わせよう」
- チームの認識のズレ(部署間の壁)をなくし、戦略をまとめるための最強の共通言語ツール。
「『検討(比較)』のフェーズでの、顧客の感情の落ち込み(ペインポイント)は何だ?」
- 裏にある意味・意図:
- 「お客さんが商品を『いいな』と思った後、他の会社の商品と比べる(検討する)段階で、なぜかみんなウチを買わずに逃げてしまう。その時、お客さんの心の中にある『不満や不安(ペインポイント)』は何だ?『送料が高くてイラッとした』のか、『説明書が難しくて不安になった』のか?そこを地図上で特定して改善しろ」
- カスタマージャーニーの中で最も重要な、「客が引いてしまう瞬間(ネガティブな感情)」をピンポイントで治療せよという指示。
「カスタマージャーニーは、商品を買った後(アフターフォロー)まで描かないとダメだぞ」
- 裏にある意味・意図:
- 「古い人間は『お客さんが商品を買う(ゴール)』までの地図しか作らない。でも今の時代は、買ったあとに『使い方がわからなくて放置する(不満)』とか『めちゃくちゃ良くてSNSに投稿する(共有)』という、買った後の心の旅(ロイヤルティ化)のフェーズを地図に入れておかないと、リピーターが絶対に増えないぞ」
- 「売って終わり」のビジネスモデルからの脱却(LTVの重要視)。
「ペルソナ」との深い関係性
カスタマージャーニーマップを作るとき、絶対にセットで登場するのが「ペルソナ(究極に具体的な架空のターゲット客)」です。
「30代の女性」といったフワッとした人間では、心の旅は描けません。 「都内に住む32歳、メーカー勤務の共働き。朝は7時出社で忙しく、電車の中でスマホのInstagramを見るのが日課。最近目の下のクマが気になっている」 このような、実在しそうなレベルまで作り込んだ「ペルソナ(架空の主人公)」を設定して初めて、「この主人公なら、朝の満員電車の中でウチの目薬の広告(インスタ版)をタップして、昼休みに価格を比較するはずだ!」という、リアルな心の動き(ジャーニー)を描くことができるのです。 「ペルソナ(主人公)がいて初めて、ジャーニー(旅の地図)が描ける」という主従関係を覚えておきましょう。
まとめ
- カスタマージャーニーマップとは、架空の顧客(ペルソナ)が自社の商品を知ってから、興味を持ち、比べ、買い、そしてファンになるまでの一連の行動と「感情の起伏」を時系列で描いた地図のこと。
- すごろくや「遠足のしおり」のように、スタートからゴールまでのマス目を書き出すことで、「ああ、この3マス目の『会員登録』という手間で、お客さんはめちゃくちゃイライラしてるな」と弱点を一撃で発見できる。
- マーケティング担当だけでなく、営業やエンジニアなど立場の違う全員が「同じ一枚の顧客の地図」を見ることで、ブレない戦略を立てることができる強力なツールである。
今日できるミニアクション: 裏紙を一枚用意して、あなたが今一番ハマっている趣味(例:キャンプ、特定のスマホゲーム、お気に入りのカフェなど)に「初めて出会ってから、どハマりするまで」の自分自身のカスタマージャーニーを簡単に書き出してみてください。「①テレビで見て知った(ワクワク) → ②でも道具が高くて一度諦めた(落ち込み) → ③友達から安いレンタルがあるよとLINEで教えられた(安心・行動) → ④行ってみたら最高だった(共有)」。このように、人間の行動と感情のアップダウンを矢印で結んだ落書きこそが、世界で一番簡単な「あなたのカスタマージャーニーマップ」なのです。